停電した夜間でも階段の段先が認識できる工夫

内階段の段鼻に蓄光機能が付いた滑り止めテープを付けることで、夜間の階段位置がはっきりします。

センサーライトの設置はぜひ検討したいところです。災害時の停電を考えると、乾電池式のタイプが大変便利です。取り外しができると、停電時の利用価値が上がります。

階段の段鼻に緊急時対応用の滑り止めテープを張り付け。停電した夜間でも段先が認識できる(写真右) 

新・バリアフリー15ヶ条 / 第5条【階段】 / 電気・設備工事 / 防災(熊本県O)

駐車スペースの活用を考える

万が一、家族の誰かが車椅子ユーザーになったときにも、楽に外出できるようにしたいものです。

車は必需品という方も多い車社会。駐車スペースを有効に活用することも考えたいところです。駐車場は、床面高さを一階床の高さと同じにでき来るか、幅は介助者の立ち位置も考えて3メートルを確保できるか、といった点を検討をしてみましょう。雨の日でも車椅子での外出を楽にするために、屋根の設置も考えてください。

車が置かれていない時なら、昼間は物干し場として使用したり、雨の日でも屋根があれば親しい仲間が集まってバーベキューを楽しめる場所として活用することもできます。

アプローチは駐車場と床の高さの差を考える

新・バリアフリー15ヶ条 / 第3条【アプローチ】 / 第12条【車いすスペース】 / 設計提案ポイント2【人とのつながり】 / プランニング (熊本県O)

ランニングコストや材料による体感温度の違いから暖房設備を考える

ヒートショックの予防のために暖房設備を入れる場合、温度設定によっては低温火傷のリスクやランニングコストが検討課題となることがあります。「暖かい床暖房」「寒くない床暖房」を比較して考えてみましょう。また、経年劣化に備えて、機器の交換ができるかどうかを考えておく必要があります。

全館床暖房の床下断熱材の施工

天然の無垢材と人工的な新建材とでは、材料による室内の空気感の違いがあることも考慮してみてください。冬季の台所やトイレ等の北側の部屋で、無垢材の敷居と、新建材のフロアーを触って比べてみると、同じ気温下でも体感温度が違うことがわかります。(ただし、無垢材に塗料が塗ってある場合は、新建材のフロアーと同じ冷たさに感じることもあるようです。)

新・バリアフリー15ヶ条 / 第2条【室内の環境】 / 第10条【洗面・脱衣室】 / 設計提案ポイント4【安心・安全性】 / 電気・設備工事 (熊本県O)

将来の変化を見越したプランニング

族の共有部分であるトイレ前・浴室の前を広く取り、洗面所・洗濯場・脱衣所を兼ねてカーテンなどで仕切るようにしておくと、将来的に車椅子を活用する場合に役立ちます。

お子様が成長して独立したときに空き部屋が物置になる可能性がある個室は狭くしてでも、共有スペースを広く取れれば家族の憩いの時間が増えます。

通路・脱衣所・洗面所を兼用スペースに

高齢に備えたリフォーム工事で、将来的なリフトやエレベーターの取り付けを見通して平面計画をする際は、1・2階の上下同じ位置に収納場所や狭い子供部屋を配置しておくと、構造的な柱や壁を大きく変更しなくても取り付けが可能となるので安心です。

玄関の吹き抜けは将来の昇降機設置スペースにもなる

新・バリアフリー15ヶ条 / 第1条【生活空間】 / 設計提案ポイント1【将来への備え】 / 電気・設備工事 / プランニング / バリアフリーリフォーム (熊本県O)

生活に欠かせない電気をいつまでも使いやすく

生活に欠かせない電気をいつまでも使いやすくしておくための住まいづくりの着眼点について述べたいと思います。

新築にせよリフォームせよ、照明のスイッチやコンセントの高さがあまり重要と感じられずに、打合せが進みがちです。それには理由があります。打合せの際に使われるのが平面図だからです。平面図には「高さ」は文字でしか表現できませんので、使い勝手が良いのか悪いのかがイメージしにくいのです。

建築士がよくやってしまいがちな失敗例が、車いす利用の方がおられる住宅のインターホン(親機)の高さです。立っている方が画像を見やすい高さを標準(床から150cm程度)としていることが多いため、車いすの方にとっては見づらい、操作しづらいものとなってしまうというものです。こういったケースに対する解決策としては、立位の方も車いすの方も視線が届く、中間的な高さに設置するという手があります。もっとも昨今では、コードレス子機が附属しているものや、携帯端末と連携できるインターホンもありますので、必ずしもインターホン親機の位置や高さだけにこだわらなくてもよくなっています。

照明スイッチやコンセントの位置、高さなども、無理な姿勢をしなくても、どんな時にも使いやすいように配慮したいものです。通常のコンセントの高さは床から20~25cmくらいが一般的ですが、これだと、掃除機のコードを抜き差しするたびに腰をかがめる姿勢になったりします。床から40cm程度にするなど、高めに設置することも検討した方がよいかもしれません。ただし、掃除機についても、コードを抜き差ししない充電式や、自動で掃除してくれるロボットなどもありますので、何が最適かはご家庭によって変わってくると思われます。

分電盤(ブレーカー)がもっともよく設置されやすいのは、洗面所のドアの上など、非常に届きにくい場所です。小さな子供が触りにくいことや、低い位置に設置してしまうと家具などと干渉しやすいため、できるだけ邪魔にならない安全な場所が良いだろうという配慮だと思います。しかし高い所に手が届かなくなったり、椅子の上に登って何かをすることが危険になったりする時期を想定すると、やや低めに設置することも検討に値します。普段のリフォームでは、わざわざ分電盤の高さまで変更することはないかもしれませんが、新築やリノベーションの際には、電気系統も大幅な工事を伴いますので、改善を検討するチャンスといえるでしょう。

新・バリアフリー15ヶ条 / 第15条【設備のコントロール】 / 電気・設備工事 / バリアフリーリフォーム (兵庫県O)

転倒予防のための生活上の工夫と建築上の工夫

倒事故予防のための生活の工夫、あるいは住まいづくりの際の工夫について述べます。

転倒事故は骨折を起こしやすく、骨折による長期臥床は、身体機能を急激に衰えさせることにつながります。ですので、できるかぎり転倒しないように注意することは非常に重要なのですが、わかってはいても、転倒事故は起きてしまうものです。

統計によると、大きな段差がある場所よりは、普段何げに暮らしている居間などでの転倒事故が最も多いという結果が出ています。

転倒を予防するための環境面での工夫としては、できるかぎり床面に、滑ったり躓いたりしそうな無駄なものを置かないことが先決でしょう。新聞紙、日用品、電気のコードなどが日ごろの生活動線の中にないかどうか見直してみましょう。

その上で、住まいづくりをする機会にできることがあるとすれば、できるかぎり段差をなくすこと、大きな段差をできるだけ小さくすること、段差の上がり降りの際に、手すりを設置することを強くお勧めします。階段に手すりを設置することは、平成12年の建築基準法改正で義務化されましたが、それ以前の住宅では必ずしも1階から2階まで連続した手すりが設置されていないケースもあります。住まいづくりの際、階段の手すり設置は必須項目とお考えください。

新・バリアフリー15ヶ条 / 第14条【床】 / 設計提案ポイント4【安心・安全性】 / 転倒防止 / バリアフリーリフォーム (兵庫県O)

洗面・脱衣所は生活する上で案外、多機能な場所

洗面所(脱衣所)は住宅設計の際には、必ずしも主役とはみなされないかもしれません。しかし、生活という面から見直してみると、「洗顔」「歯磨き」「手洗い」「入浴前後の脱衣・着衣」「洗濯」「衣類やタオル、洗剤等の保管」など、実に多くの機能がある事に気づかされます。

洗面台は通常、立った姿勢で使うことを前提としてデザインされていますが、人生のどこかのタイミングでは、座って洗顔をしたり歯を磨いたりすることも想定されます。その際、ちょっとした椅子に腰かけてそういった行為ができるようなデザインの洗面台を選ぶことで、今までの生活を維持しやすくなります。

入浴の際にも、立った姿勢で下衣の着脱を行うことが難しくなると、椅子を置いて座った姿勢で行えるようにしておきたいものです。冬は寒くないよう、窓を二重サッシにして断熱性を高めたり、脱衣所専用のヒーターを導入するなどの方策も、住まいづくりの際に検討してはいかがでしょうか。

新・バリアフリー15ヶ条 / 第10条【洗面・脱衣室】(兵庫県O)

いつでも楽に使えるトイレが生活の基本

いつでも楽に使えるトイレが生活の基本であることについて述べます。

トイレが使いにくいので、できるだけ水分を摂るのを我慢しているという方がいらっしゃいます。正確には、トイレが使いにくいのではなく、その方の体の機能とトイレの環境がうまく適合していない状況が起きているといえます。この不適合な状態を解消し、体の機能と環境を一致させることでトイレが快適に使えるようになります。

水分も栄養もしっかり摂らないと健康を維持できません。そのために、いつでも安全で快適に使えるトイレが備わっていることは、自宅の生活を維持するために重要といえるのです。水分を摂るのを無理に控えたり、尿意や便意を、限度を超えて我慢してしまうことは、健康を維持するうえで決して好ましい状況ではありません。

もちろん、排泄は必ずしもトイレで行うとは限りません。ポータブルトイレを活用したり、オムツを適切に使用することなども、排泄の一つの手段ではあります。ただ、できるかぎりトイレを使えるうちは使いたいという誰もが自然に願う気持ちを、できるだけ実現化できるように、夜間も安全に使えるトイレの位置を考えたり、トイレの建具、手すり、便器、手洗いなども適切に選定したいものです。

車いすでの使用にも対応したトイレの一例

新・バリアフリー15ヶ条 / 第9条【トイレ】 / 第12条【車いすスペース】(兵庫県O)

寝室の音や温度に対する配慮の大切さ

寝室の音や温度に対する配慮の大切さについて述べたいと思います。

健康を保つうえで重要なことは、適度な運動、十分な栄養、そして睡眠であることは今さら申すまでもありません。高齢期になると、睡眠に関して何らかの障害がある方、さらに平たく言えば、しっかり睡眠が取れない方が案外多いと言われています。寝室の環境を整備するだけで、睡眠障害がすべて解決するわけではないかもしれませんが、眠りやすい環境を整えるということは、住まいづくりの際に案外意識が向いていないかもしれないポイントです。

音や室温が適切に保ちやすくするためには、まず、窓(サッシ)を見直してみることがもっとも近道でしょう。既存の住宅でも二重窓にすることは、コストパフォーマンスが高い改善だといえます。新築やリノベーションなど、新規でサッシを導入できる場合には、極力、断熱性の高いサッシを選択しましょう。

さらに言えば、これから新築を計画されている方や、移住を模索されている方、大掛かりなリノベーションを検討中の方であれば、家の中で寝室自体のレイアウトにも気を配りたいものです。「ここが寝室」と決めるだけでなく、具体的に図面の中に正確なベッドの寸法を書き込んでみることをお勧めします。そうすることで、ベッド廻りの動きやすさや、部屋としての使い勝手が見えてきます。また、将来のどこかのタイミングで夜間の介護や看護が必要になった場合の動線も、少し視野に入れておくのも無駄ではないかもしれません。

新・バリアフリー15ヶ条 / 第8条【寝室】(兵庫県O)

調理できる喜びや楽しみをいつまでも

調理できる喜び、楽しみをいつまでも継続するための住まいづくりのポイントについて述べたいと思います。

食べることは、人生の大きな楽しみの一つです。献立を決め、自宅で調理したものを食べていくという日常は、ずっと続けたいものではあります。しかしそれは当たり前のようで、当たり前ではないのかも知れません。調理という行為は、実に多様な動作を求められるのです。食材を冷蔵庫から取り出す、洗う、切る、火にかける、ごみを処理する等、数えればきりがないほどです。

これらをこなすためには、手や指先や腕がある程度しっかり動かないと、なかなか難しいものです(もちろん手が不自由であっても、福祉用具を上手に使いこなしたり、機能訓練を通じて、調理ができるようになるケースも珍しくはありませんが)。ましてや、通常のキッチンは、これらの動作を立って行うことを前提にデザインされています。つまり立った姿勢で調理動作ができなくなる日が来ることが想定されていないのです。

立った姿勢を保てないが手や指はまだまだ動くので、できる限り自分で調理をしたいという願いをお持ちであるとすれば、座った姿勢で調理できるような、少し低めで、調理台の下に膝がはいる形状の流し台であれば、調理を続けられることでしょう。また、流し台だけではく、食器や食材の置き場、冷蔵庫のレイアウトなども、体の機能の変化に対応できるような工夫をしておきたいものです。

新・バリアフリー15ヶ条 / 第7条【キッチン】 / 元気に暮らす (兵庫県O)