設備の故障・不具合に備えて連絡先をまとめておく

住まいの設備関係で配慮していることですが、まず、リモコンやスイッチは、当然使いやすい場所や高さにすることですね。特に機器の操作が苦手な高齢者には、どこの部分のリモコン、スイッチかを表示することをお勧めいたします。

さらに、故障や不具合のときに備えて、工事施工者や設備工事担当者(下職)の連絡先を記入したものをまとめておき、それの保管場所を表示しておくといいでしょう。代表の連絡先だけではなく、実際に動く人の氏名や携帯電話番号などを記録しておくと、いざという時にすぐに対応してもらえて便利です。

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照明の役割を分析しましょう

程度の差は大きくありますが、後期高齢者に近づくほど、白内障の傾向はほぼ誰にでも出てくるといわれております。白濁化と眩しさによる視界の低減とともに、下向きの姿勢による身体バランスの崩れもあります。視界については、生活に支障が出てくるようになれば、手術によりほぼ回復できますが、眩しさは治らないようです(私の母を含め、周りの経験者からの訴え)。

寝室の照明
介助生活の場合は、就寝介助時の作業用の照明の光が、介助利用者の目に直接入らないような配置、または機種を選びましょう。夜間移動のための照明は、人感センサー付きLED採用機種が便利です。最近ではコンセントにさすだけで利用できるものが安く出てきています。工事の必要がなく、球切れの心配がごく少なく消費電力も今までの蛍光灯よりもはるかに低いので、消し忘れもなくお薦めです。

階段の照明
新築の場合は、階段利用時(特に下り)に自分の影を進行方向に作らない配置、直接光源が目に入らない方法を考えましょう。改装時は難しいこともありますが、電池式の製品もあり、点灯方法を手動に切り替えられたり、階段手すりの取り付け金具に掛けられるような製品も見受けられます。(電池は充電タイプが望ましいと思います、廃棄ゴミの削減と省資源にも良いようです。)

クローク、収納部分(流し台下)、物置などの照明
手暗がりによる間違いや消し忘れ防止に、前述と同様の製品が便利です。マグネットや両面テープで取り付けられるものもあります。

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トイレの使い方を分析しましょう

イレの計画で知っておきたいポイントを挙げてみます。

洋風便器の座面高さについて

車椅子利用者の水平移乗のための補高便座や幼児用の便座は、よく知られていたり準備もされていることが多いと思いますし、有効に利用されていると思います。しかしながら、高齢で背たけの小さい方など、すなわち座高高が低く、洋便器に座ると足裏が中に浮いてしまう方は、高齢による内臓の働きや、排便に必要な力が弱くなり、排便行為が困難な場合があります。足裏が床につかないと排便の力が十分に発揮できません。和風便器ではこの場合に問題は少ないと思いますが、洋風便器では工夫が必要です。幼児用の足置きで代用できることもありますが、十分に足裏が乗り、力をかけられる高さ(人により異なる)と強度を持った台を用意してあげましょう。内臓に大きな問題がないのに、排便にずいぶん時間がかかる方は一度試してみるとよいと思います。浴室用椅子、低い洗い場用椅子で、試してみてはいかかでしょう(高齢者施設での観察と試用からの経験)。

足裏に十分な力をかけられるように工夫

●住まい手に合う手すりの高さを確認

トイレに「手すり」はもはや常識ですが、設置位置については、まだその設置意図が十分に理解されず、取りつけられている場合があります。特別な理由を除き、便器からの立ち上がりの体重移動の負荷の軽減(主に縦手すり)と、利用時の姿勢保持(主に横手すり)が基本になります。体重移動とは、ここでは体全体の重心位置の移動を指します。高齢になると多少なりともお尻が後ろに出て、顎を前に出すようにして頭部を前に出す姿勢になりがちです。これにより体の重心位置が、中心(頭頂部中心から足裏の土踏まず中央部を通す線)から踵のあたりにずれます(これは研究機関の発表に基づいています)。この変化により、座った状態からの立ち上がりが体を前方へかなり起こさないと難しくなります。また、頭部が前方に出ているため、前後バランスが崩れやすくなっています。従って、座るときは横手すりを握ったり、座面に後ろ手を置いて座る方が出てきます。立ち上がり時には、縦手すりまで手を伸ばし引き寄せるようにして、体重移動を行い、部分的に体重も手すりにかけて、立ち上がり時の負荷を軽減し、立ち上がりを行います。

ゆえに、体と手すりの位置関係は、重要な意味を持ちます。特に縦手すりは、肩に近すぎる(縦手すりを掴んだときに腕、二の腕と脇が重なるような状態)と、役に立たないどころか、立とうした反動で、横へ転倒してしまうかもしれません。最適位置は人によりますが、便器の前(座ったときの体の前)の先端から20cm以上、横手すりは肘下の高さ(床より約60cm程度)としています。間取りよっては、縦手すり位置に、窓があったりして、取り付けられない場合もあります。こうした場合は、目的は体重移動ですから、横手すりを延長して、ななめ上方へ取り付ける等、体を手すりに沿って上方移動できるようにします。また、便器前方25cm程度、床上60cm以下に手すり上部がくるように、可動(上下または水平)式手すりを壁に取り付けたり、据え置き補助手すりを置いたりして、前方に手がかりをつけて、床へ押し付けるようにして立ち上がらせる方法もあります。

洗浄装置付き洋式便座(俗称シャワー便座)のコントロール装置について

新築時、改装時には洋式便器にほぼ100%の採用がある洗浄装置付き便座ですが、コントローラーは座面の横に付いているタイプではなく壁リモコンが望ましいでしょう。コントローラーが座面に付いているタイプだと、片麻痺(体の左右のどちらかに麻痺があること)や車椅子利用者でコントローラー側から移乗する必要のある方(多くの場合、既製品は座った時の右側)、認知症の方(場合による)、体のバランスを崩して前のめりで座面に手をついてしまうことが多い方は、利用できなかったり、誤って座る前に洗浄装置を作動させて、衣服や顔面にシャワーを浴びてしまうことがあるからです。壁リモコンであれば、取り付け位置が自由で、機能制限をして表示も大きい機種を選べるなどのメリットがあります。ただし動作電源の電池切れの心配がありますが、警告表示が出る(音声表示がないのが残念です)ものがほとんどのようです。また最近では、自家発電装置を組み込んで電源不要のものが実用化されています。いずれにしてもコストアップと機種やメーカーに制約がありますが、検討されてもよいかと思います。

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キッチンの使い方を分析しましょう

膝の入る流し台には、いくつかの使い方があります。

流し台に直接正面から向かい利用する。肘から上を流し台に乗せて、作業できる場合にはそのままでよいでしょう。個人的に高さを調整し、固定できる場合は問題ないと思います。

多人数の共同利用や、高さの固定が困難な場合や、もっと体重を乗せて調理する必要がある場合には、膝上まで、材料と器具を持ってくる必要があります。流し台の膝の入る部分には、ワゴン式テーブルを入れます。引き出して、ワゴンの下に足を通して腹部の下にテーブル部分をあてれば、かなり体重をかけて調理できますし、ある程度の材料と器具は置けます。流し台下の開口部に余裕があれば、器具や材料も入ったワゴンを入れて、自分の周りにそれらを配置して利用すれば、座った状態で動きは最小限度にできます。

●また、車椅子で調理する場合の移動方法を考えましょう。車椅子を移動するためのハンドリムの操作は衛生的に最小限度にする必要がありますので、流し台の周り、コンロ台の壁など、場合によって調理動作の周りの家具に手すりを縦・横に取り付ける(取り付けられる)ように改造します。そこに取り付けた手すりを衛生的に保つことで、ハンドリムを調理の動作のたびに、除菌することは最小で済むと思います。新築の場合は下地を工夫しておけば良いし、家具レイアウトも、それを前提とするか、変更可能として、移動距離が最低限で済むようにします。

調理時の身体的・精神的負担を軽くし、調理の時間を楽しみましょう。そのためには、以下のことにも注意が必要です。

電気既製品(冷凍・冷蔵庫、電子レンジ、炊飯器、湯沸しポット、オープントースター、食洗機など)の配置および電源位置を考えましょう。延長コードの引き回しは、つまずき事故やコード劣化などによる火災の原因にもなりやすく、十分配慮が必要です。(レイアウトは住人で決め、電気技術者による設計をお勧めします。)

●レンジフード、換気扇、照明のスイッチの位置は、腰掛けて肩の高さ以内(できれば肘掛け状態で、手の平の範囲)で手が届く配置にします。特にレンジフードの買い換え時には、強制吸排気式で壁スイッチの選択ができる機種を選びましょう。今までの経験上、発注後での変更は困難です。強制吸排気式にするのは、今後、建物自体の断熱性能とともに、気密性も高められるからです。ガス燃焼時の新鮮空気は十分に供給されなければ、一酸化炭素中毒を招きます。現在新築住宅には、24時間換気が義務付けられていますが、その供給量では間に合いません。

余談ですが、ヒートショック等に利用される暖房器具も電気式をお勧めします。特に断熱・気密改修後の住まいでは、外部への強制吸排気のない石油暖房器具、ガス暖房器具は使用しないでください。

●吊り戸棚の開き戸には、耐震ラッチを採用しましょう。私も震度5弱をいくつも経験しましたが、効果てき面でした。落下物の後始末もしなくて済みます。

●家具や大型電気製品は、耐震金具などで固定しましょう。レイアウト変更時には特に重要です。屋内の避難路を確保することにもつながります。やむを得ず延長コードを利用する際には、最近ではプラグのホコリ漏電処理をされたものが出ていますので、使用電気容量の制限とともに確認しましょう。

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ブレーカーは台に乗らずに操作できますか?

スイッチの高さは使いやすい高さを考慮して、目安としては1mくらいにしています。コンセントの高さも、同じくらいの高さだと腰をかがめづらい人や車椅子でも使いやすくなります。

電気のブレーカーも1.2mくらいの高さにしておくと、停電時に復帰ボタンを押す際にも、踏み台を使わずに楽に押すことができます。

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生活に欠かせない電気をいつまでも使いやすく

生活に欠かせない電気をいつまでも使いやすくしておくための住まいづくりの着眼点について述べたいと思います。

新築にせよリフォームせよ、照明のスイッチやコンセントの高さがあまり重要と感じられずに、打合せが進みがちです。それには理由があります。打合せの際に使われるのが平面図だからです。平面図には「高さ」は文字でしか表現できませんので、使い勝手が良いのか悪いのかがイメージしにくいのです。

建築士がよくやってしまいがちな失敗例が、車いす利用の方がおられる住宅のインターホン(親機)の高さです。立っている方が画像を見やすい高さを標準(床から150cm程度)としていることが多いため、車いすの方にとっては見づらい、操作しづらいものとなってしまうというものです。こういったケースに対する解決策としては、立位の方も車いすの方も視線が届く、中間的な高さに設置するという手があります。もっとも昨今では、コードレス子機が附属しているものや、携帯端末と連携できるインターホンもありますので、必ずしもインターホン親機の位置や高さだけにこだわらなくてもよくなっています。

照明スイッチやコンセントの位置、高さなども、無理な姿勢をしなくても、どんな時にも使いやすいように配慮したいものです。通常のコンセントの高さは床から20~25cmくらいが一般的ですが、これだと、掃除機のコードを抜き差しするたびに腰をかがめる姿勢になったりします。床から40cm程度にするなど、高めに設置することも検討した方がよいかもしれません。ただし、掃除機についても、コードを抜き差ししない充電式や、自動で掃除してくれるロボットなどもありますので、何が最適かはご家庭によって変わってくると思われます。

分電盤(ブレーカー)がもっともよく設置されやすいのは、洗面所のドアの上など、非常に届きにくい場所です。小さな子供が触りにくいことや、低い位置に設置してしまうと家具などと干渉しやすいため、できるだけ邪魔にならない安全な場所が良いだろうという配慮だと思います。しかし高い所に手が届かなくなったり、椅子の上に登って何かをすることが危険になったりする時期を想定すると、やや低めに設置することも検討に値します。普段のリフォームでは、わざわざ分電盤の高さまで変更することはないかもしれませんが、新築やリノベーションの際には、電気系統も大幅な工事を伴いますので、改善を検討するチャンスといえるでしょう。

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