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先順位の見極めについて述べている「対話の心得:第10条」は、個別性の理解について述べている「対話の心得:第5条」と共通しているところがありますが、要は「初めからやり過ぎること」を戒めているものです。「過ぎたるは及ばざるが如し」ということわざがありますが、バリアフリー設計も一緒で、やり過ぎは禁物、バランスよく段階的に整備する方が理に適っています。
大事なことは、その考えを住まい手、ご家族、ケアマネジャー等の関係者と共有する努力を惜しまないことでしょう。その意味で、建築士は孤高の専門家ではなく、調整役を買って出る専門家に徹する方が、むしろうまくいきます。
対話の心得・第10条【優先順位の見極め】(神奈川県W)
住まい手の困りごとに向き合いながら、どこに余地を残してバランス良く提案するか、本当に難しい問題です。具体的な事例があると、分かりやすくなりませんか?
納得してもらえる予算配分、福祉機器の活用、後からでは難しい工事範囲(構造下地や先行設備配管)、動線の切替えやスペース確保のために後で撤去可能な壁、ろいろな工夫がされてきています。
立地条件に即して、雨が漏らず地震に強い耐久性のある建物を造って、物理的に安定して過ごせる住環境を、住み手の暮らしを考えずに提案して、寒すぎたり暑すぎて不快な上に、動きにくく暮らしにくい家という評価を受けている建物は沢山あります。
建築士にはマニュアル通りに設計しても、個別の当事者にとっての的確な住環境整備にならないと心得て欲しい。設計マニュアルを責任回避の正当化手段としてはならない。