住まい手は、常に住まいのことを考えているわけではありませんが、病気やケガなどで体のどこかが悪くなったときに、「ここに手すりがほしい」とか「この床段差を何とかしたい」といった具体的な要望を意識したり自覚しやすくなります。このような、住まい手から発せられた要望に応えることはもちろん必要ですが、一方で、住まい手が意識していない、自覚していない要望を引き出し、それに応えることで、住まい手の生活をより豊かにできる可能性が広がります。
では、隠れた要望をどのように引き出したらいいでしょうか。その一つの方法に「雑談」があります。住まい手の興味や自尊心を刺激するような雑談を交わすなかで、住まい手が何気ない要望を口にする場合があります(その雑談をするうえでは「観察」も大事なポイントなので、第4条もご参照ください)。たとえば、蔵書がたくさんあったり、賞状が飾ってあったりするのを目にしたら、「本がお好きなのですね」とか「すごい趣味をお持ちなんですね」と声を掛けると、実はそれを住まいづくりに取り入れたいという要望が聞き出せるかもしれません。ただし、親近感を出し過ぎて、プライバシーに立ち入ったり政治や宗教の話題に踏み込み過ぎることがないように注意しましょう。
また、認知症の方に対しては、「コミュニケーションが取れないのでは」という思い込みがあるかもしれませんが、認知症の方には、いわゆる建前が無くなって、本音だけが突出している場合が多く、その場合は、ご自分のニーズがはっきりしているともいえますので、先入観を捨ててコミュニケーションを取るようにしてみるといいでしょう。
対話の心得・第2条【雰囲気づくり】(神奈川県W)