パーソナルシート

住まい手の要望にははっきりと伝えられるものと、無意識のものがあります。また、骨折や麻痺などで身体状況が急に変化した時や退院時には在宅での日常生活動作に不安があり、混乱している場合もあります。
そうした住まい手の多様な要望を整理するための有効なツールの1つに「パーソナルシート」があります。
聞き取ったご本人・ご家族の要望をパーソナルシートで整理することで、もっと聞いておきたい点がわかったり、矛盾している要望があるのはどうしてなのか、たとえば考え方に変化があったのか、家族に遠慮しているのかなど、設計する上で重要なポイントが浮かび上がってきます。
下は、「独居を続けるための外出環境整備」にあたってパーソナルシートを記入した事例です。
ヒアリングの時に取ったメモの内容から、必要だと考える項目を整理して記入しています。ヒアリングの際に所定の項目の書かれたシートを使用してもいいのですが、その方法は項目を埋めることが目的となってしまって、住まい手の本当の要望を聞き出せなくなる危険性も孕んでいます。シートの記入は目的ではなく、要望を整理するため手段ですから、個々の住まい手の要望に応じたシートを作ってみてください。マインドマップと併用すると、より効果的です。

独居を続けるための外出環境整備

右大腿骨骨折後杖歩行になり、退院を迎えた70代女性の外出環境整備について報告します。
パーソナルシート(記入例)でわかるとおり、独居、受傷前はすべての生活動作は自立で、買い物や体操教室へ不自由なく出かけていましたが、外出にはシルバーカーを使用して付き添いが必要になりました。以前から料理が得意で、近所の友人におすそ分けをしたり、お互い訪問し合い近隣関係も良好です。
今まで何でも一人でやってきて、これからも子供達に迷惑をかけたくないという強い思いがあり、独居を継続するので、ヘルパーが週2回入ることになりました。日用品や調理の材料等の買い物の付き添い、掃除、入浴の見守りなどです。
そうした要望や状態を踏まえ、アプローチを3段の緩い階段に、スライド門扉への交換、玄関の手すりの取付けなどの改修を行いました。改修前後の写真もあわせてご覧ください。

・両開き扉をスライド扉+片開き扉に変更
・来訪者は片開き扉を使用
・外出時はスライド扉を開いて、介助者と一緒に外出する

●その後の効果
独居を続けられるか不安が大きかったのですが、子供たちの支援、ヘルパー導入もあり、徐々に生活リズムが整いました。特に外出して買い物ができることは好きな調理につながり、自信を持って毎日を送れるようになりました。近所の友人2人とは今まで通り助け合っています。

住宅及び対象者の概要とヒアリング内容を整理したパーソナルシートは下記リンクよりご覧いただけます。

(東京都I) 

  住宅及び対象者の概要(記入例) (PDF版56KB)

  パーソナルシート(記入例) (PDF版76KB)

  改修前後の写真 (PDF版1.4MB)

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