玄関の手すりの可能性

上がり框(あがりがまち)の位置に縦手すりが一本あると、小さな子供からお年寄りまでついつい手すりを持っていますね。身体が弱ってくると、さらに縦手すりの前後に横手すりがあると安心です。姿勢を正したり靴を履くときに手でしっかりと持つことができます。その横手すりが玄関の扉の近くまで伸びていると扉の開け閉めが安全にできて、より便利になります。

玄関に手すりを取り付けたことで、今まで宅配便の方が来ても居留守をしていた方が、手すりをもって移動ができるようになり荷物を受け取れるようになった、留守番ができるようになった、と喜ばれた例もありました。

手摺の一例
上がり框に腰かけて靴を履かれる方のための取り付け例
玄関の段に合わせて形状を工夫した例

新・バリアフリー15ヶ条 / 第4条【玄関】 / 第13条【手すり】 / 元気に暮らす(岐阜県S)

手すりは住まい手に合わせて工夫を

すりが必要になって取り付ける際には、大きさ、径や形状が、使う人の手に合う手すりかを確認することをお勧めします。形状次第では痛みを感じて使いづらい場合があります。

玄関に手すりがほしいとき、たとえば手すりを兼ねる椅子を一緒に設置すると、靴の脱着が楽になり、ステッキや靴ベラを掛けることもできて便利です。住まい手に合わせて工夫をしてみてください。

玄関に手すりと椅子を設置した例。安全確保のため、椅子は巾木と床に固定できるようにしている。

新・バリアフリー15ヶ条 / 第13条【手すり】 / 第4条【玄関】(熊本県O)

将来の手すり設置に備えた下地の補強

「新・バリアフリー15ヶ条:第13条」では、不安定な姿勢になるところの壁には手すりをつけるか、「必要な補強」をしておくことを提唱しています。「必要な補強」とはどのようなものでしょう。

木造の建物の場合、手すりを取り付けようとする室内の壁は厚みが約12mm石膏ボードを貼っていることが多く、その石膏ボードは壁の中に約45cm間隔で立てられた間柱(まばしら)に留め付けられています。石膏ボードは石膏を固めた建築材料で、軽くて曲がりの少ない施工しやすい材料ですが、材料そのものには強度がなく、硬いものでたたけば簡単に抜けてしまいます。手すりには全体重がかかることがあり、外れないようにしっかり壁に固定する必要があります。したがって、石膏ボードそのものに手すりを取り付けることはせず、石膏ボードの内側にある木の柱や間柱に固定します。

玄関を例に挙げると、上がり框(あがりがまち)の位置に縦型の手すりを取り付けようとした場合、付けたい位置に柱や間柱が入っているとは限りません。耐震補強などの大規模なリフォーム工事をするときならば、石膏ボードをはがして間柱と間柱の間に手すりを取り付けるための木材(補強材)を入れることもできます。しかし、手すりを取り付けるだけの場合には、壁表面に間柱をつなぐ水平の木材を取り付け、それに縦手すりを固定する方法があります。

できれば新築時や大規模リフォーム時に、あらかじめ将来的に手すりが必要になりそうな壁を予測して補強材を入れておくと、いざ必要となったときに簡単にきれいに手すりが取り付けられるのでお勧めしています。

新・バリアフリー15ヶ条 / 第13条【手すり】(茨城県T)

バリアフリーリフォームの優先順位は?

フォームは「人」「住まい」ともそれぞれです。予算や状況により必要に応じて少しずつやる場合もあれば、一気にやってしまった方がいい場合もあります。

早めにやっておきたいのは、工事中の生活への影響が大きい「構造やスペースに関すること」、日常生活の確保の観点から「つまずき、転倒のもとになるような段差の解消」「階段のすべり止め設置」「階段の手すり設置」(平成12年に階段の手すり設置が義務化、それ以前は手すりがない家が多い)などです。

玄関、廊下、浴室、トイレ等の手すりは必要になってからでもよいといえますが、必要になってからというのは微妙で、身体に変化を感じ始めたとき、たとえば立ち座りがきつくなったとか転びやすくなったとか、筋力が低下したとかの自覚症状を感じはじめた時には必ず検討したいものです。身体に何の変化がなくても、片方の手に荷物を持っているときの靴の履き替えや、トイレの立ち座り、浴槽の出入りに、手すりをつかみ安定した動作ができるという利点もあります。

脳梗塞などで片麻痺になった場合、麻痺の程度、麻痺の側、使いやすい高さ等、実際に起きてからでないとわからないものは、必要になってからという考え方もあります。

新・バリアフリー15ヶ条 / 第5条【階段】/ 第13条【手すり】/ 対話の心得・第10条【優先順位の見極め】 / バリアフリーリフォーム (茨城県T)