玄関土間を広くとり多目的に活用

近頃の新築の住まいでは(余裕があればの話ですが)、玄関スペースを出入り口の空間としてだけではなく、土間を広くとることで、昔の農家の土間のように、様々な用途(庭仕事の準備、外出着の収納、自転車や車椅子の置き場など)に対応する空間とする傾向がみられます。

また、置き場としてだけではなく、広い土間があれば、上がり框(あがりがまち)の段差解消のためにスロープを設けることができたり、高齢者の靴などの履き替えを介助するなどの様々な作業に便利な多目的な空間ともなります。

多目的な玄関へのアプローチ(玄関内部は下の写真を参照)
近くの友人が気軽に集まれる玄関内部。
足元が冷え込む冬場の対策として、床に杉の無垢材を張り、下履きのままで入れるように施工。

新・バリアフリー15ヶ条 / 第4条【玄関】 / 設計提案ポイント2【人とのつながり】 / 元気に暮らす(埼玉県O)

玄関の手すりの可能性

上がり框(あがりがまち)の位置に縦手すりが一本あると、小さな子供からお年寄りまでついつい手すりを持っていますね。身体が弱ってくると、さらに縦手すりの前後に横手すりがあると安心です。姿勢を正したり靴を履くときに手でしっかりと持つことができます。その横手すりが玄関の扉の近くまで伸びていると扉の開け閉めが安全にできて、より便利になります。

玄関に手すりを取り付けたことで、今まで宅配便の方が来ても居留守をしていた方が、手すりをもって移動ができるようになり荷物を受け取れるようになった、留守番ができるようになった、と喜ばれた例もありました。

手摺の一例
上がり框に腰かけて靴を履かれる方のための取り付け例
玄関の段に合わせて形状を工夫した例

新・バリアフリー15ヶ条 / 第4条【玄関】 / 第13条【手すり】 / 元気に暮らす(岐阜県S)

手すりは住まい手に合わせて工夫を

すりが必要になって取り付ける際には、大きさ、径や形状が、使う人の手に合う手すりかを確認することをお勧めします。形状次第では痛みを感じて使いづらい場合があります。

玄関に手すりがほしいとき、たとえば手すりを兼ねる椅子を一緒に設置すると、靴の脱着が楽になり、ステッキや靴ベラを掛けることもできて便利です。住まい手に合わせて工夫をしてみてください。

玄関に手すりと椅子を設置した例。安全確保のため、椅子は巾木と床に固定できるようにしている。

新・バリアフリー15ヶ条 / 第13条【手すり】 / 第4条【玄関】(熊本県O)

出かけたくなる家を目指す

「新・バリアフリー15ヶ条:第4条」では、玄関の上がり框(あがりがまち)段差は10cm以下にすることを推奨しています。なぜそれが重要な事であるかについて述べたいと思います。

「ちょっと買い物に出かけたい」「今日は天気が良いので散歩してみようかしら」と思ったとしても、家の出入りで非常に苦労する住まいだとすれば、外出する気持ちが萎えてしまうということもあるかもしれません。体の機能が衰えたり不自由になったとしても、いつでも楽に外出できる環境であれば、外出する頻度が増えることでしょう。その結果、体の機能が保てたり、向上することさえあるのです。外出は、運動になるだけでなく気分転換にもなります。インドア派がいけないということではありません。外に出たい頻度は人それぞれです。ちょっと外に出たいと感じた時、その行為が実現しやすいかどうかがポイントなのです。

上がり框段差の10cm以下が実現すれば、玄関土間の椅子に座って靴を脱いだあと、そのまま玄関に上がれるかもしれません。あるいは、車いすの方にとっても、キャスター(前輪)の上がり降りがしやすい高さでもあります。

ただし、木造住宅では、上がり框の段差を10cm以下にするには、基礎の構造などにそれなりの特殊な工夫が必要ですので、住宅会社さんによっては、対応できないというケースも起こりえます。何が何でもクリアしなければならない基準ではなく、一つの参考アイデアとして捉えてください。

現状復帰を求められる賃貸住宅でも工夫次第で車いすで外出しやすい玄関に

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