キッチンの使い方を分析しましょう

膝の入る流し台には、いくつかの使い方があります。

流し台に直接正面から向かい利用する。肘から上を流し台に乗せて、作業できる場合にはそのままでよいでしょう。個人的に高さを調整し、固定できる場合は問題ないと思います。

多人数の共同利用や、高さの固定が困難な場合や、もっと体重を乗せて調理する必要がある場合には、膝上まで、材料と器具を持ってくる必要があります。流し台の膝の入る部分には、ワゴン式テーブルを入れます。引き出して、ワゴンの下に足を通して腹部の下にテーブル部分をあてれば、かなり体重をかけて調理できますし、ある程度の材料と器具は置けます。流し台下の開口部に余裕があれば、器具や材料も入ったワゴンを入れて、自分の周りにそれらを配置して利用すれば、座った状態で動きは最小限度にできます。

●また、車椅子で調理する場合の移動方法を考えましょう。車椅子を移動するためのハンドリムの操作は衛生的に最小限度にする必要がありますので、流し台の周り、コンロ台の壁など、場合によって調理動作の周りの家具に手すりを縦・横に取り付ける(取り付けられる)ように改造します。そこに取り付けた手すりを衛生的に保つことで、ハンドリムを調理の動作のたびに、除菌することは最小で済むと思います。新築の場合は下地を工夫しておけば良いし、家具レイアウトも、それを前提とするか、変更可能として、移動距離が最低限で済むようにします。

調理時の身体的・精神的負担を軽くし、調理の時間を楽しみましょう。そのためには、以下のことにも注意が必要です。

電気既製品(冷凍・冷蔵庫、電子レンジ、炊飯器、湯沸しポット、オープントースター、食洗機など)の配置および電源位置を考えましょう。延長コードの引き回しは、つまずき事故やコード劣化などによる火災の原因にもなりやすく、十分配慮が必要です。(レイアウトは住人で決め、電気技術者による設計をお勧めします。)

●レンジフード、換気扇、照明のスイッチの位置は、腰掛けて肩の高さ以内(できれば肘掛け状態で、手の平の範囲)で手が届く配置にします。特にレンジフードの買い換え時には、強制吸排気式で壁スイッチの選択ができる機種を選びましょう。今までの経験上、発注後での変更は困難です。強制吸排気式にするのは、今後、建物自体の断熱性能とともに、気密性も高められるからです。ガス燃焼時の新鮮空気は十分に供給されなければ、一酸化炭素中毒を招きます。現在新築住宅には、24時間換気が義務付けられていますが、その供給量では間に合いません。

余談ですが、ヒートショック等に利用される暖房器具も電気式をお勧めします。特に断熱・気密改修後の住まいでは、外部への強制吸排気のない石油暖房器具、ガス暖房器具は使用しないでください。

●吊り戸棚の開き戸には、耐震ラッチを採用しましょう。私も震度5弱をいくつも経験しましたが、効果てき面でした。落下物の後始末もしなくて済みます。

●家具や大型電気製品は、耐震金具などで固定しましょう。レイアウト変更時には特に重要です。屋内の避難路を確保することにもつながります。やむを得ず延長コードを利用する際には、最近ではプラグのホコリ漏電処理をされたものが出ていますので、使用電気容量の制限とともに確認しましょう。

新・バリアフリー15ヶ条 / 第7条【キッチン】 / 第15条【設備のコントロール】 / 設計提案ポイント4【安心・安全性】 / 電気・設備工事 / バリアフリーリフォーム (静岡県O)

高齢者配慮キッチンとダイニングテーブルの活用

夫婦が年をとってくると、お互いに協力して家事をするようになります。

高齢者対応キッチンは、ニースペース(膝が入るスペース)があるため、腰かけて調理ができるのでとても楽です。また、高さも一般の高さなので、立って調理することももちろんできます。身長差があるご夫婦の場合は、疲れない高さにスリッパやまな板の厚みで調整してもいいですね。

また、ダイニングテーブルは広いので、みんなで調理をするにはとても便利です。パートナーや友達、ヘルパーさんと一緒に話をしながら作る料理は楽しいものです。明るくて人が集まりやすいダイニングキッチンがあると良いですね。

高齢者対応キッチン

新・バリアフリー15ヶ条 / 第7条【キッチン】 / 元気に暮らす (岐阜県S)

便利なキッチンの機能は使い方の確認を

ッチンの流し台にはフットスイッチタッチ式の水栓を活用すると節水にも役立ちます。自動水栓は必要時以外にも感知して水が出てしまう可能性があります。

車椅子での利用を考えるときは、L型のキッチンで体の腰から上の部分の動作でシンクとコンロが使えるタイプを選ぶと移動範囲が少なくていいと思いますが、回転時に足乗せ部分が当たるような邪魔になるものがないかの確認も必要です。

新・バリアフリー15ヶ条 / 第7条【キッチン】(熊本県O)

調理できる喜びや楽しみをいつまでも

調理できる喜び、楽しみをいつまでも継続するための住まいづくりのポイントについて述べたいと思います。

食べることは、人生の大きな楽しみの一つです。献立を決め、自宅で調理したものを食べていくという日常は、ずっと続けたいものではあります。しかしそれは当たり前のようで、当たり前ではないのかも知れません。調理という行為は、実に多様な動作を求められるのです。食材を冷蔵庫から取り出す、洗う、切る、火にかける、ごみを処理する等、数えればきりがないほどです。

これらをこなすためには、手や指先や腕がある程度しっかり動かないと、なかなか難しいものです(もちろん手が不自由であっても、福祉用具を上手に使いこなしたり、機能訓練を通じて、調理ができるようになるケースも珍しくはありませんが)。ましてや、通常のキッチンは、これらの動作を立って行うことを前提にデザインされています。つまり立った姿勢で調理動作ができなくなる日が来ることが想定されていないのです。

立った姿勢を保てないが手や指はまだまだ動くので、できる限り自分で調理をしたいという願いをお持ちであるとすれば、座った姿勢で調理できるような、少し低めで、調理台の下に膝がはいる形状の流し台であれば、調理を続けられることでしょう。また、流し台だけではく、食器や食材の置き場、冷蔵庫のレイアウトなども、体の機能の変化に対応できるような工夫をしておきたいものです。

新・バリアフリー15ヶ条 / 第7条【キッチン】 / 元気に暮らす (兵庫県O)