車椅子での戸の開閉におけるスペースの確保を考える

車椅子で戸の開閉をする際、引き戸の場合であっても、寄り付きの時に前輪の部分が身体よりもかなり前に出ます。そのため、前に出た部分のスペースが確保されていないと引き手に手が届かなくなってしまいます。壁の位置を考えたプランニングが必要です。

中途障害の方の車椅子対応事例。引き戸の先に空間を確保しています。
車椅子を想定して物入れの奥行を少し狭くして通路幅を広げた事例。寝室からの出入りが楽になります。

新・バリアフリー15ヶ条 / 第12条【車いすスペース】 / (熊本県O)

駐車スペースの活用を考える

万が一、家族の誰かが車椅子ユーザーになったときにも、楽に外出できるようにしたいものです。

車は必需品という方も多い車社会。駐車スペースを有効に活用することも考えたいところです。駐車場は、床面高さを一階床の高さと同じにでき来るか、幅は介助者の立ち位置も考えて3メートルを確保できるか、といった点を検討をしてみましょう。雨の日でも車椅子での外出を楽にするために、屋根の設置も考えてください。

車が置かれていない時なら、昼間は物干し場として使用したり、雨の日でも屋根があれば親しい仲間が集まってバーベキューを楽しめる場所として活用することもできます。

アプローチは駐車場と床の高さの差を考える

新・バリアフリー15ヶ条 / 第3条【アプローチ】 / 第12条【車いすスペース】 / 設計提案ポイント2【人とのつながり】 / プランニング (熊本県O)

いつでも楽に使えるトイレが生活の基本

いつでも楽に使えるトイレが生活の基本であることについて述べます。

トイレが使いにくいので、できるだけ水分を摂るのを我慢しているという方がいらっしゃいます。正確には、トイレが使いにくいのではなく、その方の体の機能とトイレの環境がうまく適合していない状況が起きているといえます。この不適合な状態を解消し、体の機能と環境を一致させることでトイレが快適に使えるようになります。

水分も栄養もしっかり摂らないと健康を維持できません。そのために、いつでも安全で快適に使えるトイレが備わっていることは、自宅の生活を維持するために重要といえるのです。水分を摂るのを無理に控えたり、尿意や便意を、限度を超えて我慢してしまうことは、健康を維持するうえで決して好ましい状況ではありません。

もちろん、排泄は必ずしもトイレで行うとは限りません。ポータブルトイレを活用したり、オムツを適切に使用することなども、排泄の一つの手段ではあります。ただ、できるかぎりトイレを使えるうちは使いたいという誰もが自然に願う気持ちを、できるだけ実現化できるように、夜間も安全に使えるトイレの位置を考えたり、トイレの建具、手すり、便器、手洗いなども適切に選定したいものです。

車いすでの使用にも対応したトイレの一例

新・バリアフリー15ヶ条 / 第9条【トイレ】 / 第12条【車いすスペース】(兵庫県O)

浴室の扉の開閉方法や幅を考える

「新・バリアフリー15ヶ条:第11条」では、浴室についての提唱の中で、「扉の開閉方法や幅を考える」ことを挙げています。ここでいう「幅」とは、車いすの通行ができる有効開口幅を想定しています。車いすの種類により幅や長さが違いますが、戸が廊下の側面にある場合は、車いすが回転する動作の分、広めの幅が必要になることがあります。

戸は、開閉方法により「開き戸」「引き戸」が多く用いられており、それぞれに特徴があります。開き戸(90度開き)では戸の厚み分の有効開口幅が狭くなり、引き戸では引き込む長さ分のスペースが必要となります。また、引き戸を開けやすくするために把手を付けると、その把手の分だけ有効開口幅が狭くなるので注意が必要です。

開き戸と引き戸では開閉動作が異なり、開閉の際に立つ位置も変わります。開き戸では戸の回転軌跡の中には入れず、立つ位置によっては手前に開くときに身体を後退させなければなりません。その点で引き戸は身体の移動が少なく使いやすいといえます。

中廊下を広くとり、引き戸に車いすの寄り付きがしやすい空間を確保した事例

新・バリアフリー15ヶ条 / 第11条【浴室】 / 第12条【車いすスペース】(茨城県T)