高齢者配慮キッチンとダイニングテーブルの活用

夫婦が年をとってくると、お互いに協力して家事をするようになります。

高齢者対応キッチンは、ニースペース(膝が入るスペース)があるため、腰かけて調理ができるのでとても楽です。また、高さも一般の高さなので、立って調理することももちろんできます。身長差があるご夫婦の場合は、疲れない高さにスリッパやまな板の厚みで調整してもいいですね。

また、ダイニングテーブルは広いので、みんなで調理をするにはとても便利です。パートナーや友達、ヘルパーさんと一緒に話をしながら作る料理は楽しいものです。明るくて人が集まりやすいダイニングキッチンがあると良いですね。

高齢者対応キッチン

新・バリアフリー15ヶ条 / 第7条【キッチン】 / 元気に暮らす (岐阜県S)

玄関の手すりの可能性

上がり框(あがりがまち)の位置に縦手すりが一本あると、小さな子供からお年寄りまでついつい手すりを持っていますね。身体が弱ってくると、さらに縦手すりの前後に横手すりがあると安心です。姿勢を正したり靴を履くときに手でしっかりと持つことができます。その横手すりが玄関の扉の近くまで伸びていると扉の開け閉めが安全にできて、より便利になります。

玄関に手すりを取り付けたことで、今まで宅配便の方が来ても居留守をしていた方が、手すりをもって移動ができるようになり荷物を受け取れるようになった、留守番ができるようになった、と喜ばれた例もありました。

手摺の一例
上がり框に腰かけて靴を履かれる方のための取り付け例
玄関の段に合わせて形状を工夫した例

新・バリアフリー15ヶ条 / 第4条【玄関】 / 第13条【手すり】 / 元気に暮らす(岐阜県S)

ブレーカーは台に乗らずに操作できますか?

スイッチの高さは使いやすい高さを考慮して、目安としては1mくらいにしています。コンセントの高さも、同じくらいの高さだと腰をかがめづらい人や車椅子でも使いやすくなります。

電気のブレーカーも1.2mくらいの高さにしておくと、停電時に復帰ボタンを押す際にも、踏み台を使わずに楽に押すことができます。

新・バリアフリー15ヶ条 / 第15条【設備のコントロール】 / 電気・設備工事 / バリアフリーリフォーム (熊本県O)

昼間も夜も快適に過ごせる寝室に

介助が必要になる生活を考えるならば寝室は腰窓にしておくと、ベッドの下の見せたくないものを外部から隠すことができます。腰窓にできないときにはガラスを上下二枚にして下の方を型硝子にすると良いでしょう。

避難を考えると出入りしやすい掃き出し窓があるといいですね。また、出窓は介助の時に物を置く場所やテレビの置き場としても活用できます。窓の取り方によっては、雨の日にもベッドの上で布団を干せる可能性がありますので検討します。ブラインドは日の入りの調整とプライバシーの保護ができます。

寝室の出窓は介助用品を置くこともできて便利です

寝室のベッドより下の位置にセンサーライトをつけると、夜中にトイレなどに行くときに足元の明かりが確保できます。明るすぎないことも確認してください。ベッド上で身体を寝かせた時に照明が消える位置も確認しておきます。センサーライトは、停電時・災害時にも活用できるよう、取り外せるタイプがお薦めです。

新・バリアフリー15ヶ条 / 第8条【寝室】 / バリアフリーリフォーム(熊本県O)

家具への地震対策を怠らずに

間を収納家具等で仕切ると生活状況の変化に合わせて間取りが変更できます。この場合、家具に対する地震対策を施しておくことが必要です。ただし、市販の後付けの耐震突っ張り棒などは、設置位置によっては天井が破壊されることがあるので注意を要します。設置前に天井裏の構造を確認する必要があります。

なお、天井高さまでのタンスを造れば倒れません。実際の天井高さよりも20mmくらい低くして隙間をつくり、15mmの板を後からはさみ込むという方法であれば設置が容易になります。

高さのある家具は上部を活用して地震対策

設計提案ポイント4【安心・安全性】 / 防災 / バリアフリーリフォーム(熊本県O)

停電した夜間でも階段の段先が認識できる工夫

内階段の段鼻に蓄光機能が付いた滑り止めテープを付けることで、夜間の階段位置がはっきりします。

センサーライトの設置はぜひ検討したいところです。災害時の停電を考えると、乾電池式のタイプが大変便利です。取り外しができると、停電時の利用価値が上がります。

階段の段鼻に緊急時対応用の滑り止めテープを張り付け。停電した夜間でも段先が認識できる(写真右) 

新・バリアフリー15ヶ条 / 第5条【階段】 / 電気・設備工事 / 防災(熊本県O)

駐車スペースの活用を考える

万が一、家族の誰かが車椅子ユーザーになったときにも、楽に外出できるようにしたいものです。

車は必需品という方も多い車社会。駐車スペースを有効に活用することも考えたいところです。駐車場は、床面高さを一階床の高さと同じにでき来るか、幅は介助者の立ち位置も考えて3メートルを確保できるか、といった点を検討をしてみましょう。雨の日でも車椅子での外出を楽にするために、屋根の設置も考えてください。

車が置かれていない時なら、昼間は物干し場として使用したり、雨の日でも屋根があれば親しい仲間が集まってバーベキューを楽しめる場所として活用することもできます。

アプローチは駐車場と床の高さの差を考える

新・バリアフリー15ヶ条 / 第3条【アプローチ】 / 第12条【車いすスペース】 / 設計提案ポイント2【人とのつながり】 / プランニング (熊本県O)

ランニングコストや材料による体感温度の違いから暖房設備を考える

ヒートショックの予防のために暖房設備を入れる場合、温度設定によっては低温火傷のリスクやランニングコストが検討課題となることがあります。「暖かい床暖房」「寒くない床暖房」を比較して考えてみましょう。また、経年劣化に備えて、機器の交換ができるかどうかを考えておく必要があります。

全館床暖房の床下断熱材の施工

天然の無垢材と人工的な新建材とでは、材料による室内の空気感の違いがあることも考慮してみてください。冬季の台所やトイレ等の北側の部屋で、無垢材の敷居と、新建材のフロアーを触って比べてみると、同じ気温下でも体感温度が違うことがわかります。(ただし、無垢材に塗料が塗ってある場合は、新建材のフロアーと同じ冷たさに感じることもあるようです。)

新・バリアフリー15ヶ条 / 第2条【室内の環境】 / 第10条【洗面・脱衣室】 / 設計提案ポイント4【安心・安全性】 / 電気・設備工事 (熊本県O)

将来の変化を見越したプランニング

族の共有部分であるトイレ前・浴室の前を広く取り、洗面所・洗濯場・脱衣所を兼ねてカーテンなどで仕切るようにしておくと、将来的に車椅子を活用する場合に役立ちます。

お子様が成長して独立したときに空き部屋が物置になる可能性がある個室は狭くしてでも、共有スペースを広く取れれば家族の憩いの時間が増えます。

通路・脱衣所・洗面所を兼用スペースに

高齢に備えたリフォーム工事で、将来的なリフトやエレベーターの取り付けを見通して平面計画をする際は、1・2階の上下同じ位置に収納場所や狭い子供部屋を配置しておくと、構造的な柱や壁を大きく変更しなくても取り付けが可能となるので安心です。

玄関の吹き抜けは将来の昇降機設置スペースにもなる

新・バリアフリー15ヶ条 / 第1条【生活空間】 / 設計提案ポイント1【将来への備え】 / 電気・設備工事 / プランニング / バリアフリーリフォーム (熊本県O)

生活に欠かせない電気をいつまでも使いやすく

生活に欠かせない電気をいつまでも使いやすくしておくための住まいづくりの着眼点について述べたいと思います。

新築にせよリフォームせよ、照明のスイッチやコンセントの高さがあまり重要と感じられずに、打合せが進みがちです。それには理由があります。打合せの際に使われるのが平面図だからです。平面図には「高さ」は文字でしか表現できませんので、使い勝手が良いのか悪いのかがイメージしにくいのです。

建築士がよくやってしまいがちな失敗例が、車いす利用の方がおられる住宅のインターホン(親機)の高さです。立っている方が画像を見やすい高さを標準(床から150cm程度)としていることが多いため、車いすの方にとっては見づらい、操作しづらいものとなってしまうというものです。こういったケースに対する解決策としては、立位の方も車いすの方も視線が届く、中間的な高さに設置するという手があります。もっとも昨今では、コードレス子機が附属しているものや、携帯端末と連携できるインターホンもありますので、必ずしもインターホン親機の位置や高さだけにこだわらなくてもよくなっています。

照明スイッチやコンセントの位置、高さなども、無理な姿勢をしなくても、どんな時にも使いやすいように配慮したいものです。通常のコンセントの高さは床から20~25cmくらいが一般的ですが、これだと、掃除機のコードを抜き差しするたびに腰をかがめる姿勢になったりします。床から40cm程度にするなど、高めに設置することも検討した方がよいかもしれません。ただし、掃除機についても、コードを抜き差ししない充電式や、自動で掃除してくれるロボットなどもありますので、何が最適かはご家庭によって変わってくると思われます。

分電盤(ブレーカー)がもっともよく設置されやすいのは、洗面所のドアの上など、非常に届きにくい場所です。小さな子供が触りにくいことや、低い位置に設置してしまうと家具などと干渉しやすいため、できるだけ邪魔にならない安全な場所が良いだろうという配慮だと思います。しかし高い所に手が届かなくなったり、椅子の上に登って何かをすることが危険になったりする時期を想定すると、やや低めに設置することも検討に値します。普段のリフォームでは、わざわざ分電盤の高さまで変更することはないかもしれませんが、新築やリノベーションの際には、電気系統も大幅な工事を伴いますので、改善を検討するチャンスといえるでしょう。

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