高
齢だが元気で健康な住まい手に対して、「数年後には車いす生活になっているかもしれません。そうなっても安心なように、住まいをバリアフリー化してしまいましょう」という提案をしたらどうなるでしょう。不快に思われる方が多いのではないでしょうか。「バカにするな!」と激怒されるかもしれません。実際、数年後に車いす生活になったり脳梗塞で片麻痺になったりということは、誰にでも起こりえることです。しかし、だからといってそうなると決めつけて、いま現在の住まいを徹底したバリアフリー仕様にするような提案をすることは、ライフスタイルなどが千差万別である住まい手の個別性をないがしろにする行為であり、拒絶されてしまっても当然といえます。
はじめは、バリアフリー設計の要である余裕のある間取りで設計しつつ、たとえば車いす生活になってもトイレが使えるよう、横の壁を抜いて引き戸にできる、あるいは玄関脇の壁を抜いて段差解消機を導入できるといった、いざという時には簡易な改修で色々な対応できるような設計を「さりげなく提案する」ことが、住まい手の現在と将来を考えた提案といえるでしょう。
対話の心得・第5条【個別性の理解】 / 元気に暮らす (神奈川県W)