将来を見据え「さりげなく提案する」

齢だが元気で健康な住まい手に対して、「数年後には車いす生活になっているかもしれません。そうなっても安心なように、住まいをバリアフリー化してしまいましょう」という提案をしたらどうなるでしょう。不快に思われる方が多いのではないでしょうか。「バカにするな!」と激怒されるかもしれません。実際、数年後に車いす生活になったり脳梗塞で片麻痺になったりということは、誰にでも起こりえることです。しかし、だからといってそうなると決めつけて、いま現在の住まいを徹底したバリアフリー仕様にするような提案をすることは、ライフスタイルなどが千差万別である住まい手の個別性をないがしろにする行為であり、拒絶されてしまっても当然といえます。

はじめは、バリアフリー設計の要である余裕のある間取りで設計しつつ、たとえば車いす生活になってもトイレが使えるよう、横の壁を抜いて引き戸にできる、あるいは玄関脇の壁を抜いて段差解消機を導入できるといった、いざという時には簡易な改修で色々な対応できるような設計を「さりげなく提案する」ことが、住まい手の現在と将来を考えた提案といえるでしょう。

車いすになってもトイレ・洗面所・浴室・脱衣所に移動でき、自然の風が通り抜ける空間。

対話の心得・第5条【個別性の理解】 / 元気に暮らす (神奈川県W)

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将来を見据え「さりげなく提案する」」への2件のフィードバック

  1. さりげなく提案するのは、なかなか難しいですね。
    不確かな将来の場所の使い方を制約しないように、動線やスペースサイズに関わる配慮が重要だと思っています。
    現在のニーズに応えながら、将来の計画の余地を担保する場合に、どこまでどのように説明するのが良いか迷います。
    下手な説明をして住まい手を混乱させるおそれのある時には、スペースが無駄に見えないように仮の使い方を提案して置くこともありますが、現在のニーズへの説明だけに控えることもあります。(他の設計者はどうされているのでしょうか?)

  2. トイレの中に建具を引き込むのは便器の前の方に手摺が付けれないリスクもありますね、全体の配置の関連性をどう考えるかもあるような気がします。

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