コラム

経験者の声をコラムとして集めたものを随時更新いたします。

執筆者の地域性や対象者の環境によりその内容は多種多様で、住まいの個別性が大切にされています。
ここから正解を求めるのではなく、皆さまの引き出しを増やすことにお役立てください。

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コラム

隠れた要望を引き出すには

住まい手は、常に住まいのことを考えているわけではありませんが、病気やケガなどで体のどこかが悪くなったときに、「ここに手すりがほしい」とか「この床段差を何とかしたい」といった具体的な要望を意識したり自覚しやすくなります。このような、住まい手から発せられた要望に応えることはもちろん必要ですが、一方で、住まい手が意識していない、自覚していない要望を引き出し、それに応えることで、住まい手の生活をより豊かにできる可能性が広がります。

では、隠れた要望をどのように引き出したらいいでしょうか。その一つの方法に「雑談」があります。住まい手の興味や自尊心を刺激するような雑談を交わすなかで、住まい手が何気ない要望を口にする場合があります(その雑談をするうえでは「観察」も大事なポイントなので、第4条もご参照ください)。たとえば、蔵書がたくさんあったり、賞状が飾ってあったりするのを目にしたら、「本がお好きなのですね」とか「すごい趣味をお持ちなんですね」と声を掛けると、実はそれを住まいづくりに取り入れたいという要望が聞き出せるかもしれません。ただし、親近感を出し過ぎて、プライバシーに立ち入ったり政治や宗教の話題に踏み込み過ぎることがないように注意しましょう。

また、認知症の方に対しては、「コミュニケーションが取れないのでは」という思い込みがあるかもしれませんが、認知症の方には、いわゆる建前が無くなって、本音だけが突出している場合が多く、その場合は、ご自分のニーズがはっきりしているともいえますので、先入観を捨ててコミュニケーションを取るようにしてみるといいでしょう。

対話の心得・第2条【雰囲気づくり】(神奈川県W)

玄関土間を広くとり多目的に活用

近頃の新築の住まいでは(余裕があればの話ですが)、玄関スペースを出入り口の空間としてだけではなく、土間を広くとることで、昔の農家の土間のように、様々な用途(庭仕事の準備、外出着の収納、自転車や車椅子の置き場など)に対応する空間とする傾向がみられます。

また、置き場としてだけではなく、広い土間があれば、上がり框(あがりがまち)の段差解消のためにスロープを設けることができたり、高齢者の靴などの履き替えを介助するなどの様々な作業に便利な多目的な空間ともなります。

多目的な玄関へのアプローチ(玄関内部は下の写真を参照)
近くの友人が気軽に集まれる玄関内部。
足元が冷え込む冬場の対策として、床に杉の無垢材を張り、下履きのままで入れるように施工。

新・バリアフリー15ヶ条 / 第4条【玄関】 / 設計提案ポイント2【人とのつながり】 / 元気に暮らす(埼玉県O)

住まいの完成後も、住まい手から連絡してもらいやすくするために

まい完成後も継続的に住まい手と人間関係を構築するのは、容易ではありません。建物が完成してしまえば、どうしても住まい手と設計者は疎遠になるからです。

その解決策として、毎年、住まい手へ年賀状や暑中見舞いを出し続けることをお勧めします。こうしておけば何かあった時、設計者の連絡先を把握していただけている可能性が高く、ご連絡をいただける可能性が高まりますし、結果的に住まい手の暮らし方や変化に合わせて住環境を整えることにつながります。

設計提案ポイント5【設計者の心構え】 (神奈川県W)

住み替えの提案が選択肢となるとき

「設計提案ポイント3:住みやすさ」では、住まいの周辺環境を考慮したうえで、複合的な判断により現実に即した提案をすることの必要性をポイントとして挙げています。

昨今、「買い物弱者」「運転免許証の返納」など、高齢者などの地域内での生活基盤の揺らぎが問題となっているように、住まい手の身体機能の状況を踏まえたとき、とりわけ社会インフラの整備状況や地理的・立地的な条件に不安を抱える地域においては、いかに室内をバリアフリー化し、人的なネットワークを駆使したとしても、住み続けられる条件を整えることが困難な場合がありえます。

こうしたとき、住まい手が住み慣れた家に住み続けることを望んでいたとしても、住まい手の将来にわたる安心・安全を考え、住み替えの提案を選択肢として検討することが求められます。

設計提案ポイント3【住みやすさ】 (神奈川県W)

住まい手から「身内にも秘密にしてほしい」と言われたら…

住まい手から得た情報を住まい手の許可なく「他者」に漏らしてはならないことは、対話の心得として基本中の基本です。そして、この原則において、「身内」でさえ「他者」に該当する場合が往々にしてあります。よくある例は、『住まい手がこうしたいと思っていることに対し、快く思っていない、または不要だと思っている家族がいる』というケースです。あるいは、『住まい手がこうしたいと思っているのには理由があるが、その理由は家族の誰にも知られたくないので秘密にしてほしいと頼まれる』というケースもあります。

こうしたケースは、その家族が同居であるか別居であるかを問わずよくあり、設計者はまさに板挟みの状況に置かれます。しかし、このような局面でこそ、個人情報を大事にしなくてはなりません。そのうえで、家族が納得できるような提案をできるかどうかで、設計者の力量が問われるといえます。

対話の心得・第9条【個人情報の保護】(神奈川県W)