『ある一線』を超えないうちに

齢者の住環境整備に関わっていると、「ある一線」を感じることがたびたびあります。それは「もう習慣を変えられない」という年齢的な一線です。

日常どの居室で過ごすか、日常どんな椅子にどんな姿勢で座るかに始まり、入浴動作、排泄動作など様々な場面でのこれまでの習慣を変えられなくなる。ケアマネジャー、理学療法士、作業療法士、そして私たち建築士のような専門職が、「(理論的に)このように動作を変えると楽になりますよ」と助言しても、長年慣れ親しんだ習慣を変えられないという方が多いのです。

もちろんこれはすべての方に当てはまることではなく、その方の身体状況やキャラクターによって様々です。それでも、住環境を含めて改善した方が安全になることは、やはり「ある一線」を超える前に実施した方がいいと考えます。後期高齢期はその目安だと思います。

対話の心得・第10条【優先順位の見極め】(茨城県O)

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『ある一線』を超えないうちに」への5件のフィードバック

  1. 便器の形式、洋式便器を使いこなせるか?
    高齢なので馴染んでいる習慣を変えられないと思われていた方でも、
    デイサービスで使ってみると、脚の痛かった人はその快適さが分かって、
    それまでの生活習慣に拘らずに、すんなりと馴染んでしまう方が多いですね。

    • 公共施設でトイレ改修工事の意見の話し合いの時に和式トイレを残して欲しいとの要望が出たのは高齢の方が多い団体でした、他の人が触れたトイレに直接触れるのに抵抗があられるような話でした。

  2. 習慣は本当に変えられないものでしょうか?「私はこういうことをしない人である」という思い込み、自己イメージを変えたくないかも知れません。
    先日のコメントの洋便器利用のように、無意識にうちに、行動変容することがありますから。体を動かしながら快適さを味わってもらうことは、説得ではなく納得という感じかも知れません。

  3. 高齢になったときに火災予防のためにガスコンロをIHに交換して数年してからガスの火が付かない、見てほしいとの事例もありました。

  4. 個体差は大きくありますが、一定の年齢を超えると心身の柔軟性が低下するように感じます。住環境への心身の適応力があるうちに変更を勧めたいですね。
    「自意識」が邪魔をする場合もあり、心も柔軟に場に馴染めるうちに。
    決めつけないことが重要です。拒否は、馴染んだ生活を変えたくないという意思表示だったりします。提案の良さを実感できると、あっけなく変わることも起こります。

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