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新築時の希望の一つに自分の個室を持ちたい、というのがある。子どもの成長による勉強部屋の確保や自分の書斎など。また家族であっても生活時間帯がずれてくるなどの理由で個室がほしいという声も聞く。
でも少し待って良く考えてほしい。玄関ホールから階段を上がって直接2階の個室へ入れるような建築計画はプライバシーの確立にはなるが、家族同士がいつ何をしているのか全然分からなくなる可能性がある。外出時や帰宅時に居間でくつろぐ家族にちょっと顔を合わせて声を交わすための工夫がほしい。そこで提案したいのが小窓の活用だ。
オープンな居間を経由しない計画をする場合、廊下に面した扉に小窓を付けたり、吹抜けにした居間に面して2階の各室に小窓を設けたりすると、例え個室にこもっていたとしても気配が感じられる。
このような小窓の設計は干渉し過ぎないで家族としてお互いの気遣いを伝え合い、最小限の関係を保つのに役立つ。1階に高齢者の個室がある場合も、廊下に面して小窓を作っておくだけで中の様子が察せられたり、一声掛けるきっかけになったりする。その際、型板ガラスのはめ込みより、障子などを活用して柔らかい光や音が伝わってくるものにしたい。
実務者会員 市瀬敬子
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