昇降しやすくなるとしても階段のスペースに余裕を持たせることは無駄にみえてしまうものだ。そんなときは階段の昇降以外の目的にも目を向けてみよう。
階段の上部にトップライトや窓を作ると暗くなりがちな廊下周りを明るくすることができる。窓を東側に作れるなら、朝日が差し込むことを期待もできる。階段が「光の煙突」となる。
階段は必ずしも1階の廊下と2階の廊下をつなぐものではない。リビングやダイニングの中に作るアイデアもある。
2階の個室へと上がっていくには家族の集まる空間を通り抜けるようにするのだ。家族のコミュニケーションのための、個室とリビングやダイニングとをつなげる空間として考えたい。1階と2階の違う階にいるときでも、階段を媒介にお互いの気配を感じられるようにもなる。バリアフリー住宅では階段は悪者だが、上下につながる空間の変化の楽しさは捨てがたい。
小さな子どもたちは階段に座って本を読むのが好きだ。ゆったりと昇降しやすい階段は子どもにとっても楽しい場所になるはずだ。そんな楽しい思い出が残るように階段は住宅の中で一番明るく作りたい。
実務者会員
大瀧雅寛 (
大滝建築事務所)