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カナダでは新しく家を建てると大きくなる木を一本、庭に植えることになっている。その木の育ち具合によって住宅の歴史を読みとることができる。大きく育ったシンボルツリーはその家の自慢でもあり、地域の人々の自慢にもなる。
日本でも家を建てた記念に、記念樹を植えることを勧めたい。最初はひょろっとした苗木が家族の成長と共にたくましく育っていく様は家や郷土への愛着を深めてくれる。気を付けたいのは樹木選び。10年後、20年後の樹形を想定して選択することだ。ケヤキは枝ぶりが美しく好まれるが、樹勢が強いのでそれなりの広さが必要だ。さもないと枝が電線に引っ掛かるようになり、頻繁に枝払いする羽目になる。ハナミズキは可憐(かれん)な花を咲かせることで人気があるが、西日に弱い。また建物の配置と同じくらい樹木をどこに植えるかも慎重に検討することだ。
高齢になったとき四季の移ろいを確実に届けてくれる樹木が身近にあると心を豊かにしてくれる。キンモクセイやジンチョウゲの懐かしい香りを楽しみつつ、小鳥のさえずりや風に揺れる葉の音を楽しむこともできる。そしてこうした環境は道行く人との楽しい会話も演出してくれることだろう。
実務者会員 加藤知徳 (加藤建築事務所)
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