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道路から玄関に至るアプローチは、安全や心地よさに対する家主の心遣いがよく表れるところだ。敷地の狭い日本の住宅では道路からいきなり玄関扉という例も少なくない。アプローチも庭の一部と考え、少し迂回(うかい)してでもゆったりしたアプローチを確保したい。
アプローチの床材は、タイルや石、モルタルなど様々あるが、雨に濡れても滑らないことが肝要である。段差の位置が認識しやすく、リズミカルに歩けることも大切なポイントとなる。安価なモルタルの床でも、段差のあるところにレンガや石の端材をアクセントとして埋め込むと、草花との相性も良くなり、潤いのあるアプローチが演出できる。
タイルや石の場合には段差が認識しやすいように、色を変えるなどの配慮がほしい。そのとき気をつけたいのが色(色相)の違いよりも、明るさ(明度)の違いを出すことだ。色の違いは、薄暗くなったり、高齢になったりしたときに識別しにくくなるからだ。
照明も全体を均一に照らすより、段のあるポイントを照らすようにすると、より分かりやすくなる。また、光源が目に入らないように工夫することによって照度を落としても床面を見やすくでき、落ち着いた雰囲気を醸し出せる。
実務者会員 加藤知徳 (加藤建築事務所)
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