|
外出先から帰宅し、門扉を開ける。「キーッ」という我が家独特の音がする。そんなときほど、家に帰ってきたのだという実感をかみしめることはないだろう。玄関は家の顔だとよく言われるが、道路から一歩足を踏み入れる門扉やその周辺こそが、家の顔だという気がする。にもかかわらず、家を建てるときも門扉の優先順位は案外低い。家屋が建ってから、さて門扉をどうしようか、というケースも結構ある。
家を建てる敷地の状況にもよるが、門扉周辺にゆったりとしたスペースが取れないことが多い。そのため玄関ポーチの階段を下りていきなり、門扉の開閉をすることになる。しかも多くの家が開き戸を使用しており、開閉の都度、スペースをとることになる。屋内の建具では面積を取らない引き戸が主流になりつつあるが、門扉に関してはメーカーのカタログを見てもまだ大半は開き戸だ。
加齢とともに足腰が弱くなり「ポーチの階段をスロープに変えたい」「緩やかな階段に変えたい」となったときにも、開き戸が邪魔になることがよくある。さらに高齢者には何と言っても開き戸の方が操作しにくく危ない。できれば計画段階から引き戸や伸縮門扉の採用を考えたい。
実務者会員 溝口千恵子 (高齢者住環境研究所)
|
|