ダイニングのデザイン(1) シニア世代になると「家食(いえしょく)」が多くなるようです。家食とは、言葉の通り家で食事をとることです。食する場所を限定せずに、家族と一緒に食べる食事というニュアンスもあるようですが、ここでは家の中で食事をゆっくり楽しむということでお話をさせていただきます。 今では座卓で食事を行う方は随分少なくなったのではないでしょうか。畳に座っての食事だと、ご主人は食後にそのままごろっと横になることもできますが、奥様の後片付けでは、立ったり座ったりの動作が煩雑で足腰に負担がかかります。その点、イスとテーブルでの食事だと膝に負担も掛からず、楽に動けることでシニア世代からの生活スタイルでは一般的になっているのだと思います。また、シニア世代の特徴に、朝昼晩の三食とも家食であることや時間のゆとりがあることなどがあります。ですので、時間帯を分けてダイニングのデザインを考えたいと思います。最初は「朝食」ですが、朝食でのポイントは、窓の向きと大きさです。 人間の体内時間は25時間という学説があります。地球時間の一日は24時間ですので、私たちは1時間のずれを毎日調整しながら生活を行っています。この調整に重要なものが「光」で、それも太陽光線のように強い光だそうです。 一日のスタートである朝食の時間に太陽の光を浴びることで、体内時計をリセットし(これにはメラトニンというホルモンが関係しているようです)、一日のバイオリズムを整えられています。そのためのポイントは、ダイニングの窓は東向きに配置することです。天井面までの大きな窓にすると、太陽光が部屋の奥まで取り込むことができます。朝の光を浴びながらゆっくりとコーヒーの香りを楽しむのは、シニア世代の特権と言えるのではないでしょうか。 ちなみに、太陽光は、晴天時では100,000lx(ルクス:照度の単位)ですが、曇っている場合でも20,000〜30,000lxあります。しかし、一般的な住宅の居室の照度は150〜250lxです。明るいと言われているコンビニでも500〜700lx程度ですので、一般的な人工光では体内時間の調節は難しいことも付け加えておきます。 (写真: ダイニングのデザイン) ダイニングのデザイン(2) さて、前回が朝食についてのお話でしたので、今回は昼食について、ダイニングをデザインしてみたいと思います。 シニア世代は、「夫婦仲良く昼食を」がひとつのテーマだと思います。このテーマは60代の奥様から「御三(おさん)どん」が大変、夕食だけでよかったのに朝昼晩の用意が必要なの」という声をよく聞くために、敢えて提案いたしたいと思います。 「御三どん」が大変なのは、ご主人が家で三食を摂るようになったことが大きな要因であることは想像にたやすいと思います。仕事をしている私にも耳が痛い言葉でもあります。御三ドンの労力の軽減については、キッチン編でお話を致したいと思いますので、それが解決したとして、楽しく昼食をとるために場づくりのテーブルを考えてみたいと思います。 ダイニングのテーブルの大きさを検討したことがあるご家庭はどのくらいあるのでしょうか。家族人数を意識して4人用(約125p×70p)が多いと思います。この大きさのテーブルでも食事を摂ることができます。しかし、長時間複数の人間が活用するテーブルはないと思います。まして食後ゆったりと過ごしたいシニア世代では、お互いの距離感が保てずに息苦しくなることもあるのではないでしょうか。ですので、ご主人が食後、そそくさと食卓から離れてしまい、奥様は「片付け」という現実に引き戻されます。コーヒーを飲みながら午後の予定をという優雅な時間は、ご主人のいすを引く音で引き裂かれて行きます。そこでテーブルを一回り、いえ二回り大きなものを考えてみませんか。大きさの目安は、新聞紙を広げても二人分の食器を並べることができることです。 シニア世代の夫婦二人だからこそ、思い切って幅200p×奥行き100pのテーブルをお勧めします。特に奥行きは重要で100p程度あればその面に座ることもできます。テーブルを挟んで正面に座るより、横面に座ると食事のシーンも新鮮なものになると思います。食後、ご主人が新聞を見ている横顔を視野に入れながら庭に目を向けている午後は、ゆっくりと時間が流れると思います。 ダイニングのデザイン(3) ダイニングのデザインの最後は夕食についてです。今回のサブテーマは、「家食でディナーを楽しみましょう」です。 食事は雰囲気を楽しむものでもありますね。特に夕食は時間を掛けてゆっくりと楽しみたいものですが、食事のシーンはいろいろあります。ローソクの揺らぎ下で楽しむワインとローストビーフ、心も体も温まる鍋料理、大勢でわいわいと楽しむ焼肉パーティなど。 これらにシーンを演出するために欠かせないのが「灯り(照明器具)」です。同じ空間でも照明を変えるだけで雰囲気は一変するものです。夕食をディナーに変身させる立役者は照明計画ということになります。 ダイニングはできるだけ多灯照明で計画を行いましょう。天井面の一つだけ器具で部屋全体を照らすようにするのが一灯照明ですが、天井や壁などに幾つかの照明器具を組み合わせるのが多灯照明です。多灯照明では、天井に取り付けるシーリングランプ、吊下げタイプのペンダント、コーナーや壁を照らすダウンライト、置きものを照らすスポットライト等があります。当たり前なのですが、複数の照明器具を配してもスイッチが一つでは多灯照明にはなりません。器具によっては調光スイッチ(明るさをスイッチで調整できるもの)やリモコンスイッチなどを組み合わせるとより高い演出が可能になります。また、間接照明やフロアスタンドなどもぜひ取り入れたいアイテムです。 簡単なリフォームでは、天井照明をライティングレールし、レールの複数の照明器具を取り付ける方法があります。テーブルの中心にペンダントを配し、スポットライトで絵画を照らすと部屋の雰囲気はドラマティックに変わります。レールには間接照明を組み込んでいるものもありますので、天井に光を当てると広がりのある部屋になります。また、照明器具にスポットや間接照明を組み込んでいる多機能なものもありますので、検討されるとよいと思います。 部屋の雰囲気は照明で変わります。さて、多灯照明で家食でディナーを楽しみましょう。 多灯照明の例 天井照明:OL211663N ODELIC ペンダンド:OP087395 ODELIC 多機能照明の例 OL076834N ODELIC ←前の日記へ 次の日記へ→