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素足で歩くのが気持ちの良い季節になった。なのにスリッパを手放せない方も多いのではないだろうか。住宅展示場や旅館では玄関に並んだスリッパはウエルカムの象徴のようだが、案外、不便な点もある。
昨今、住宅内での事故防止が求められているが、そのためにあえてスリッパをはかない生活を提唱したい。階段を緩やかに作ったり、床材を滑りにくい工夫をしたりしても、つっかけたスリッパが引っ掛かって転倒するという事故があるからだ。
スリッパを室内で履いている人の多くはトイレでまた別のスリッパに履き替える。このとき扉が開き戸であればどちらかのスリッパが扉に引っ掛かる。それを避けるためにトイレの床を下げ、不要な段差を設けたり、扉を短く切って音やにおいが漏れることになったりする。
ではなぜスリッパを履くのか。靴を履かない日本の暮らしが洋室になったため、とはよくいわれるが、足元の寒さ防止の意味もある。床材がひんやりしていたら、冬の寒い時期、靴下だけでは底冷えがしてしまう。ならば暖かな床材や床暖房を活用すれば問題ない。夏にも足触りが良いコルクなどの床材ならば一年中を素足で快適に過ごすこともできるだろう。床材と生活の仕方をセットで考えていきたい。
実務者会員 中村陽子 (創作工房И)
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