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住まいを新築するときは家族の現状や経済的な条件などが先に立ち、高齢期を見越した住宅をその時点で手に入れるのは難しい。そもそも身体機能の低下の状態も人により様々だし、将来、必要になったらその時に考えれば良いと何も手を付けずに先送りにしがちだ。
ただ、いざ必要になったときにも、できることとできないことがある。家の形を決めてしまう前に将来、比較的簡単に住まいの形を変えられるようにあらかじめ改築案をつくっておくことをお勧めしたい。
そのとき重要な要素となるのが壁だ。洗面所やトイレの間仕切壁を取り払えば車椅子で移動したり、排泄や入浴の介助を受けたりする場合もスペースを確保しやすい。居間の片隅の壁を取り払えばトイレまですぐ行けるといったケースもある。高齢期にはさまざまな障壁を取り除き、オープンな間取りで暮らすと安心だし快適だ。
建物の壁には家全体を保持する骨格となっていて動かせない壁と、間仕切が目的で容易に動かせる壁がある。間仕切壁で将来、取り除く可能性のある壁はあらかじめ動かせるようにしておきたい。間取りを決める壁の配置については、設計者に将来の住まい方も含めて相談することが大切だ。
実務者会員 宮島敦子(宮島住環境デザイン室)
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