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谷崎潤一郎の「陰翳(いんえい)礼賛」には伝統的な日本家屋の闇(やみ)のことが書いてある。深い軒先から障子を通して入ってくるぼんやりした薄明かりの中で日本の美は作られてきた。しかし今は蛍光灯が昼夜の差をなくしてしまっている。住宅で隅々まで均一に明るい部屋もどうかと思うが、日常の生活で明るいことは決して悪いことではない。
窓から水平に入る光が部屋の奥まで届くには限度がある。しかし垂直の明かりは建築基準法で3倍の効果が認められているように、小さい開口でもかなりの明るさが期待できる。そこで住環境の変化に影響を受けない住まいをつくるためには、暗くなりそうなところに垂直の明かり取りをつくることを勧めたい。
まず真上からの採光には天窓(トップライト)がある。既製品はガラスやポリカーボネイトでできていて、直射日光を防ぐにはルーバーという遮光装置を併用する必要がある。またハイサイドライトは普通の屋根より一段高く設けた越し屋根の壁上方から光を入れる方法だが、設置角度によって直射日光を遮ることもできる。
自然光は省エネにつながり、高齢者の衰えた視力のためにも良い光環境をつくる。
実務者会員 永山盛孝 (一級建築士事務所 団設計工房)
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